AfterShokz Aeropex の快適さと、音質の正直なところ

はじめに

AfterShokz の Aeropex を買いました。世に出ているコンシューマ向け骨伝導イヤホンというとだいたい AfterShokz か BoCo あたりになるかと思いますが、Aeropex はそのうち AfterShokz の現時点でのフラグシップモデルです。

骨伝導であること、耳を塞がないこと、装着感の軽さなどから、音を聴くためのコストを圧倒的に下げられて総じて非常に快適 で、防水・防塵性能も満足のいくものでしたが、音質は絶対評価すると正直だいぶ厳しい 感触でした。

もちろん、根本的には 骨伝導方式は絶対的な音質を重視して買うものではない ですし、本質的な価値は骨伝導であることそのもの にこそあるので、そもそも音質 “のみ” でこの製品を語るべきではありません。また当然ながら、骨伝導だと肉や骨の影響も個人で異なりますし、そうでなくても音質の感じ方や捉え方にはそもそも個人差があります。

が、特に音質については、インタネット上のレビュ記事では過大評価感も否めませんでした。そこでこのエントリでは、あくまで個人的な(ぼくの耳に依存した)ものではありますが、音質面での正直な感想をちょろっと書いていきます。

前提

で、そうはいってもそもそもおまえの耳って信用できるの? といわれるとあまり自信もないわけですが、ぼく自身は、

  • 普段は HD650、IE80、MDR-CD900ST、WF-SP900、HD598CS など 1 ~ 5 万円あたりのレンジのヘッドホン・イヤホンと ValveX-SE(真空管ヘッドホンアンプ)を愛用している
  • 15 年くらい、PA、生音系楽器の録音、マスタリングなどを趣味でかじっている

ようなヒトです。

Aeropex で音楽を聴く

聴感上、明らかに 低音域がかなり減衰 します。

周波数特性は公式には 20 Hz ~ 20 kHz までとされていますが、テストトーンで試すと、ぼくの耳では、通常のヘッドホン・イヤホンで 16 ~ 16 kHz まで聴き取れる環境 で、Aeropex だとだいたい 50 ~ 13.5 kHz の聴き取りが限度でした。可聴範囲が狭いだけでなく、音が低くなるにつれて音量の減衰 を感じます。

ごく簡単なセットアップではありますが、録音用の別のマイクに密着させた状態でホワイトノイズを再生 したときの周波数特性が次の通りです。

バイノーラルマイクでもなく専用の設備もない手作業でのアナログな測定ではありますが、IE80 に比較して 1.6 kHz 以下の減衰が見て取れます。また、骨伝導ならではですが、空気ではなく骨の振動を媒介して聴くことになるため、さらに骨や骨に至る肉、脂肪の物的特性による減衰や吸収の影響もあるはずです。

結果として、低音域が薄くてもあまり気にならない類の音楽を BGM やラジオのように聴き流すのであれば気軽に使えますが、鑑賞・視聴目的でじっくり聴いたり、重低音があってこそのジャンルの再生に使おうとすると、ペコペコになってしまってあまり楽しめない、というのが正直な感想です。

Aeropex で通話をする

Aeropex にはマイクも搭載されており、通話目的での利用も謳われています。

が、聴感上は、素直に表現すると ものすごくモコモコな音 です。通話相手にストレスを与えかねないレベルなので、昨今のテレワークでのオンラインミーティングなどでの利用は厳しい感触でした。

マイクは、フリーのナレーション素材 をスピーカで再生し、それをマイクで拾わせて録音して確認しました。

比較対象とした HD598CS のマイクでは、原音に対してそこそこ近い特性を描けたのに対し、

Aeropex のマイクでは、低音域の持ち上がりに対して中音域以上の落ち込みが激しく、8 kHz より上は拾えません。

根本的には Bluetooth のプロファイル(HFP)の仕様の限界があるので、有線のマイクと同等の高音質にはどうやってもできない(サンプリングレートが 16 kHz なので波形は 8 kHz で頭打ちする)のは仕方がないのですが、それにしても常用は厳しいと言わざるを得ない音質でした。

マイクの性能を重視するのであれば、Aeropex ではなく通話に特化した OpenComm の発売を待った方が良さそうです。HFP の限界はあるものの、ブームマイクが付いており、少なくとも集音性能については Aeropex よりも優れていることが期待できます(とはいえ広告記事も多く、実際に使ってみないと評価しにくいですが……)。

個人的まとめ

というわけで、音質 だけ を切り取ってしまうと、定性的にも定量的(といっても精度は高くないわけですが)にも、どうしてもネガティブな評価になってしまいます。

が、冒頭で記述した通り、本質的には 音質よりも耳を塞がない利用形態そのもの に価値がある製品なわけで、音質を求めるのはそもそも筋違い ともいえます。

総じて、個人的には、

  • 音を聴くためのコストが圧倒的に低い
    • 耳を塞がない
    • 装着時の圧迫感が無い
    • 外音を聴ける
    • 会話ができる
    • 軽い
    • ワイヤレスで取り回しが楽
  • 充分な防水・防塵性能を持っている
    • トレーニング中の利用を目論んでいるが、ひとより汗をかく体質のため、IPX5 レベルでは不十分(壊した経験あり……)
    • Aeropex は IP67 で水没にも耐えられることが期待できる
  • バッテリの持ちがよい
    • 公称 8 時間と充分に長い

あたりは相当ポジティブに評価していて、特に一点目がぼくにとっては非常に大きい価値です。ぼんやりと音が欲しいときに常用していくことになりそうです。

@kurokobo

くろいです。ギターアンサンブルやら音響やらがフィールドの IT やさんなアルトギター弾き。たまこう 48 期ぎたさん、SFC '07 おんぞう、新日本ギターアンサンブル、Rubinetto。今は野良気味。

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