巨匠ペペ・ロメロさんが、伝説の銘器トーレスでタレガを弾く。そういう垂涎の企画があったから行ってきた。5 月 20 日、トッパンホール。
老成円熟した演奏、と思った。とてもしぶい……! 貫禄というか、正統というか。雑味のないかんじ。
イマドキのギタリストさんは定番曲でも自分なりのうたいかたで揺らしてくるひとがおおいイメージでいるのだけれど、この方はなんていうか…… そういうイマドキの流行り廃りを気にする世界とは別の世界に生きているような、正しく “枯れた” 時代、作曲者であるタレガさんに近い世界に生きている方なのかなって。
個性あふれるわけでもないし、派手さなんてぜんぜんないけど、逆にそれだけ純粋で、正統たる風格のあふれる世界。
トーレス、生で聴くのは初めてだった。タッチの所為か、ばつぐんに音がよいのかといわれればそんなこともないような気もしてしまって、名前が独り歩きしているところは少なからずありそうだなあとも思ったけれど、 でもよく乾いてるのにほんのりやわらかい音がした。
早い曲、明るい曲よりは、ゆったりとうたう曲のほうが相性がよく思えて、気持ちよく聴けた。すごく雑にいうと、こういう楽器でヨークとか弾いたらいろいろとイケてないダメな感じになるんだと思う。
冒険はしない、清く正しい演奏で、モダンなクラシックギターって本来はこういうものなんだって思える、そんな楽器と、そんな演奏だった。
個性あふれる演奏もいいけど、たまにはこういう年季の入ったまっすぐで純粋な音を聴いて、毒を抜きたいとも思った。