いかすみを初めて食べた。存外においしかった。
ぼくはだいたいいつでも、服が黒い。服が黒いから黒井と呼ばれるようになったわけだし、まあそれはいいんだけど、とにかく、そう、服が黒い。
だから想像通りというかなんというか、ぼくに『好きな食べ物って何?』と聞いてきた人は、こっちが何かを言う前に『いかすみ?』と追撃してくる。のだけど、今まで食べたことがなかったので、機会があったら食べたいなあと思いながら過ごしてきたわけです。
ただぼくは、幼少期からずっとそうなんだけど、見た目の悪いものは食べたいと思えない人だったのです。そんなわけで、小さい頃は貝類(ぬらぬらでちょうグロいもんねとくにサザエ)とか、ぐちゃぐちゃになにかが混ぜ込まれた何かとか、あんまり食べられなかった。
ぼくにとってはいかすみもその『見た目の悪い』もののひとつで、だって黒いんですよ、食べ物なのになんで黒いの。黒いのにおいしい食べ物って他にありますか。ないでしょう。海苔はまああれはおいしいけど、あれは味付けの核にはなりえない風味づけ目的のものだし。
という感じで、食べたいけど食べたくない境目を行ったり来たりしていたのだけれども、おいしいイタリアンのお店に入ったときにいかすみのスパゲッティがあったので思い切って注文してみたわけです。
そのお店は二回目で、何を頼んでもおいしかったから、いかすみにしても必ずちゃんとしたほんもののいかすみを出してくれるだろうという確信があったわけで。思い切りました。
そしたらおいしかったです。おちはありません。でもあれだね、口が黒くなるね。