はじめに
NUC 8 のオンボード NIC は、ESXi 7.0 U1 から、組み込みのドライバではうまく認識されなくなっています。このため、NUC 8 の ESXi を 7.0U1 以降にアップグレードするには、これまでは対象のドライバ ne1000
だけ旧バージョン(7.0b 世代)にダウングレードする必要がありました。この目的で、以前のエントリ では、特定のドライバだけダウングレードしたカスタムイメージプロファイルの作成と、それを利用したアップグレードを紹介しています。
が、先日、VMware Flings でこの問題を解決できる新しいドライバがリリースされました。
このドライバは、ne1000
ではなく別の新しい e1000-community
(と igc-community
)として認識されるため、組み込みの ne1000
ドライバと一切競合せず、共存できる 点がポイントです。NIC は ne1000
でなく e1000-community
を使って動作するようになるため、ne1000
のバージョンは気にする必要がなくなり、ダウングレードが不要 になります。
適用方法
従来通り個別に導入したりカスタムイメージプロファイルへ組み込んだりできるだけでなく、vLCM にコンポーネントとしてインポートすれば、イメージ管理でも利用できます。
コマンドラインでの適用
リリースページの Instructions に記載 されている方法です。データストアなどに配置して esxcli software vib install
する、従来の方法です。詳細は割愛します。
イメージプロファイルへの組み込み
イメージプロファイルに組み込んで適用することも可能です。イメージプロファイルの作成には、以前のエントリ でも登場した vCenter Server の Image Builder のほか、PowerCLI も使えます。
イメージプロファイルができれば、手動で適用する以外にも、以前のエントリ のように vLCM のベースライン管理でも取り扱えるようになります。
これも従来通りなので、詳細は割愛します。
vLCM イメージへの組み込み
今回はこの方法を採用しました。
特定のドライバを ESXi に導入したい場合で、以前のエントリ のようにそれが 既存のドライバの置き換え(アップグレードまたはダウングレード)である場合には、vLCM のイメージ管理は使えませんでした。
一方で、今回のドライバは、先述の通り別の新しい e1000-community
(と igc-community
)として認識されるため、従来の ne1000
には何ら依存関係がなく、競合しません。ne1000
のバージョンを気にする必要がそもそもなくなるので、単純な 新しいドライバの追加、つまり、vLCM イメージへのコンポーネントの追加 として取り扱えます。
このためには、まずは Lifecycle Manager の画面で、アクション
> 更新のインポート
(ACTIONS
> Import Updates
)でダウンロードした ZIP ファイルをインポートします。
これにより、vLCM イメージの構成要素である コンポーネント として取り込まれます。結果は デポのイメージ
> コンポーネント
(Image Depot
> Component
)で 独立型コンポーネント
(Independent components
)の一つとして確認できます(リリース日でソートすると探しやすくなります)。
最後に、ホストクラスタに紐づける vLCM イメージを新規に作成(または既存イメージを編集)して、コンポーネントの一つとして今回のドライバを追加します。
これで、クラスタの ESXi ホストにとって あるべき状態(Desired State や Desired Image と表現されます)として、指定した ESXi のベースイメージに今回のドライバが追加された状態が定義されました。あとはコンプライアンスを確認して、クラスタの ESXi ホストをこのイメージに準拠するよう修正すれば、実際にドライバが導入されます。
修正が完了すると、物理アダプタのドライバが e1000-community
になっている様子が確認できます。
おわりに
これで、泣く泣くベースライン管理に戻していた ESXi のバージョン管理手段を、再びイメージ管理に戻せました。ne1000
に一切競合しないで共存できるようにデザインされている点がきれいですね。別の視点では、実際にコンポーネントを追加する手順を実践できたのもよかったです。
7.0 が出たての頃は、vLCM のイメージ管理にも種々の制約がありましたが、U1 でのアップデートをはじめ、今後も発展が期待できます。今後一般化するであろう新しい機能をハードウェアの(いわば相性の)問題で使えないのは残念だったので、今回のドライバはうれしいリリースでした。