JGA コンクールでおなじみの中学校、大和市立の引地台中学校さんのギター部。
コンクールの演奏はもう十年以上前から何度も聴いていたけど、定期演奏会は実は行ったことがなかった。スケジュールの調整がついたので初参加。3 月 29 日、土曜日のお話。
コンクールでは出場している中学校の中でもばつぐんの演奏を披露してくれるこの引地台さん。毎年のように舞台袖で聴いていても、年々めきめきと腕を上げている感があって、ここ数年は聴くたびに引地台さんてこんなにレベル高かったっけなあと思わされる、そんな具合。
今回の定期演奏会は、コンクールで演奏の核になっていた三年生が抜けたあとでの開催。だから当然ながら全体の演奏はコンクールのときほどのレベルではなかったけれど、部全体の “成長過程” がよくみえて、次のコンクールがひじょうに楽しみになるような、そんな演奏会だった。
“松明の火” は去年のコンクールにむけて弾き込んだだけあって、今回のプログラムの中ではいちばん聴き応えがあった。身体が曲を覚えているのかなと、そうなるとあとは勢いで押せるし、そしてこの曲の場合はそういう弾き方がよく合う。
“松明” の前の曲、講師の O 氏が指揮をふる今年のメイン曲らしい BWV 542、通称 “大フーガ” は、まだだいぶたどたどしかったけれど、これが次のコンクールでは “松明” のレベル以上の演奏になることはまず間違いがないわけで。いいですね、先が楽しみ。
この O 氏、4 小節のレッスンに 2 時間かけたとかかけないとか、細部へのこだわりがひじょうにつよい先生。これまでの弾きっぷりや弾けっぷりをみると、引地台さんは、荒く全体を短時間で作ってからあとで細部に取り組む、のではなくて、最初から時間をかけてじっくりゆっくりじわじわと錬成していく、そういう進め方のほうが伸びるタイプなのかなあと、そんな感があった。そうすると O 氏のじわじわこだわり型の教育方針(?)との相性もよさそうで、これはぜひ何百時間でもかけて至高の大フーガにしていただきたいところ。
そして一年生の学年合奏が思いのほかすてきな仕上がり。曲がよいのか編曲がよいのかわからないけれど、『こう弾こう』という意思があると自然と合ってくる。大フーガは複雑な曲だけれど、徐々に慣れていって、こういう “わかりやすいポップス” と同じ姿勢で取り組めるようになると、部全体にとってもつよいエネルギィになりそうだなと。
反面、重奏は全体的にちょっと危なっかしかった……。
とはいえ、中学生の部活となると『たのしいは正義』みたいなところがあって、演奏者が楽しければそれだけで勝ち! 合格! っていう側面も多分にある。
部活というのはおもしろいもので、基本的なモチベーションは『楽しいから』というただそれだけの、といいつつ実は “最強” の欲求が源泉。だからそういう組織がつくった成果に対する評価は、上手か下手かよりも、成績や品質よりも、なんだかんだいって単なる当人たち自身の “満足度” がもっとも重要なのではないかしら、みたいなことを考えている。
現実問題、中学生というのはつい最近まで小学生だった方々であるわけで、体格やら筋力やらの身体の発達が成人と同じ楽器を扱えるところまで行きついていない、ということもありそう。
それでもこれだけの人数が好きであつまって楽しそうに活動しているというのは、ウマいヘタ関係なく、それだけでやっぱり “最強” なんだなあと、そんな感想。
8 月、コンクールの舞台、MUZA 川崎のホールで会えることを楽しみにしています。